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「あきらのだらだら土曜日」
ゴスッ!!
いや、これは何かしら硬い物がぶつかった時の擬態語だから。
決してゴスロリの略ではないんで、そこんとこヨロシク。
そもそも、なぜ今のような効果音がほとばしったのかというと、
トラッキィ「おきんけーコラァ! おきんけーコラァ!」
と、トラッキィがごはんがススムくん目覚ましのセリフを言いつつ、アキラの頭に目覚まし時計を叩き付けていたからである。
ゴスッ! ドカッ! バキッ!
トラッキィはなおも攻撃を繰り返した。
さすがのアキラも耐えかねて、振り下ろされる時計を受け止めると、トラッキィめがけてそれを投げ付けた。
しかし、トラッキィはひらりと身をかわした!
目覚まし時計Aはこなごなに砕け散った!
トラッキィ「あーあ、せっかくの武器(鈍器)が壊れてもうたやないか。」
…しかし、アキラはもう寝入っていた。
それをみたトラッキィはやれやれと言った風に、どこからか一枚のカードを取り出した。
トラッキィ「しゃあないな。こう成ったらこの手しかあらへん。大音量で応援歌を流せ!『トラキチ』!!」
次の瞬間、アキラの頭の中に大音量で犯神タイガースの応援歌が響き渡った!
応援歌に魂を鼓舞され、アキラは完全に目覚めた。
時刻は午後1時…今日は第二土曜日で学校が休みだ。
つまり、心おきなく二度寝ができるという事である。
だが、アキラは今テンションが上がっているのだ。
それに、アキラは生来正常な人間の 嗜好 思考など持ち合わせていない。
朝起きた時にぬいぐるみ(しかも贔屓の球団のマスコット)が枕元にいようと、この男にとっては大した問題ではない。
そのため、昨日の一連の出来事を夢や幻覚であるなどとは一切思わず、現実として受け入れる事ができたのだ。
アキラ「こうして外に出たのはいいものの、どうやってカードを探すわけ?」
トラッキィ「力は力に引き寄せられるんや。おまえがなーんもせんでもカードの方からやって来る。」
アキラ「じゃあ、家で寝ていればいいではないか。」
トラッキィ「その時、家が無事やという保証はどこにもあらへん。」
アキラ「そういうこと…」
というわけで、カードに出くわす事を期待しつつ、アキラはセンター街へ向かって歩いた。
自分の家は心配するが、公共の場所はどうなってもいいらしい。
そうこうしているうちに、センター街に着いた。
やはり、人間がたんまりいる。
その様相を見たトラッキィが、アキラのリュックの内部で呻いた。
トラッキィ「なんで、人がぎょーさんおる事を『ひとごみ』っちゅうか知っとるか?」
アキラ「人が込み合っているから。」
トラッキィ「いや…人間がまるでゴミのように都会に溢れかえり、街を汚しとるからや。」
アキラ「過激派め…」
トラッキィ「見ろ! 人がゴミのようだ!」
アキラ「いや待て、ムスカ。」
その時、トラッキィは何かを見つけたらしい。
トラッキィ「おい、アキラ! あれ見てみ! アレ!」
トラッキィの指した先には、X軸とY軸がやたらデカイ男がいた。ようするに、ふくよかさんである。
トラッキィ「うっわぁ! すっげぇデブだよアレ! 髪だって脂ベトベトだよ!」
アキラ「…いや、知り合い。」
トラッキィ「ウソ!? クラスメイト?」
アキラ「うん、まあ。」
トラッキィ「相撲部?」
アキラ「うちの学校に相撲部は無い。」
トラッキィ「そうか……。あ! なんかこっちに気づいたみたいやな。」
そう言うと、トラッキィはリュックの中に引っ込んだ。
トラッキィに相撲部とか言われた男「やぁ、アキラさん。」
アキラ「あぁ、うん。」
彼の名は「原田 宮貴(はらだ みやき)」。
体重110kgはあると噂される、超 デブ 肥満 糖尿びょ …巨漢である。
その外見と、5ケタに達するポケットマネー、金銭感覚の狂い具合から、人は彼を「ぼっちゃん」と呼ぶ。
DoAをやるためだけに、わざわざX箱(仮)を買うようなツワモノである。
好きな物はブロッコリー。…いや、野菜の方ではなくて。
ぼっちゃん「君が土曜日に外出なんて珍しいな。何か買い物?」
アキラ「べつに。」
ぼっちゃん「あっそ。僕はちょっと兄メイト(仮名)に用があるんだけど、来たかったら来てもいいよ。」
アキラ「…まあ、ヒマだから。」
トラッキィ(待てコラ!)
ってなワケで、二人は並んで歩き出した。
どの角度から見ても、明らかにバランスが悪い。
だが、そんな事は誰も気にしない。
街はいつもの調子だ。
一生知り合う事が無いであろう人々がすれ違ってゆく。
店の前では、その店固有のハッピを着た店員が声を上げて、値段の安さか何かをアピールしている。
ぼっちゃん「給料ドロボーか。やーい、安月給。」
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トラッキィ(何、今の?)
とかなんとか思っていると、前方にチラシ配りのアルバイトの若者がいた。
ぼっちゃんはチラシを受け取るなり、その場でやぶって捨てた。
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トラッキィ(…え!? おいアキラ! コイツさっきから何なんや!)
アキラ(いや、彼はいつもこんな調子。)
トラッキィ「はぁ!? わけわからんわ! なんじゃそりゃ! こんな事でアイデンティティを築こうとしとるんか! デブコラ!」
トラッキィはリュックから飛び出して叫んだ。
突然、アキラのリュックから飛び出して来た某球団のマスコット(しかも話せる&空中浮遊)を見て、さすがのぼっちゃんもギョッとした。
ぼっちゃん「え? …な…なにコレ?」
トラッキィ「このデブが! さっきからなんやねん! ワレ、たいして強くもないくせに、なにケンカ吹っかけて廻っとんじゃコラ!
まぁ、おまえがいつか刺し殺されようが、ワイの知ったこっちゃないが、どうせおまえアレやろ? 一人やったらようでけへんのやろ!? え!?
おまえ、こんな事にアイデンティティを見出そうとしとるんか!? あんな虚勢はったところで、所詮おまえは……」
と、さんざんまくしたてて、トラッキィは突然口をつぐんだ。
トラッキィ「かなり近いな…アキラ、カードの気配や。」
ぼっちゃん「え? いや、アキラさん! 何この生き物!? コレ犯神のトラッキィだよねぇ!?
それに、カードの気配って!? キャプター!?」
トラッキィ「おった! そこや!」
トラッキィの示した先にいたのは、頭にタンポポのような花を咲かせた、根性のありそうなカエルだった。
トラッキィ「あれは『タンケロ』のカードや! 効果はわからんけど、はよ封印せな!」
ぼっちゃん「いや、ちょっと待って、説明してくれよ!」
アキラ「…後でじっくりと教えてあげよう。まずはコレを見る事だ!」
と、アキラは昨日使った鍵を取り出した。
アキラ「闇の力を秘めし鍵よ…真の姿を我の前に示せ…! 契約の元、アキラが命じる! レリーズ!!」
ぼっちゃん「何それ! まんまじゃん!」
トラッキィ「そこはツッコミ入れんでやってくれ…」
ぼっちゃん「あ! 杖の装飾が微妙に違う!」
トラッキィ「ちゃっちゃと封印やアキラ!」
その言葉を聞いてか、カエルはアキラ達に背を向け、逃げようとした。
トラッキィ「逃げんな! 根性無し! おい、アキラ! 逃げてまうぞ! 追いかけな!」
しかし、アキラは空中ダッシュをしようとするトラッキィを止めた。
トラッキィ「なんや? このままやと、逃げてまうで!」
アキラ「その心配はいらないんだよねー。」
そう言うと、アキラはポケットから一枚のカードを取り出した。
昨日捕まえたばかりの「さかねじ」のカードだ。
トラッキィ「はぁ!? んなモン使っても…」
アキラ「とりあえず殺ってしまえ! 『さかねじ』!!」
次の瞬間、カエルの足元の地面からドリル…いや、ネジが高速回転しながら飛び出した!
グチャ☆ ビチャ☆ グシュ☆ ドチャ☆
胸糞の悪くなるような音とともに、カエルは無数の肉片になり、頭の上に咲いていた花は血肉の中に埋もれた。
一同「グロい! グロいよ!!」
アキラ「汝のあるべき姿に戻れ!!」
トラッキィ「確かに、今の姿は、とてもあるべき姿とは思えんな。」
肉片と花とが煙のような状態になり、四角い光に吸い込まれるようにして、やがて一枚のカードに変化した。
トラッキィ「ようやったなアキラ! でも、さっきのはグロかったぞ!」
アキラ「ふっ……」
トラッキィ「どういう笑いなの、それ!?」
と、まあ、なんとか2枚目のカードも封印できたってワケや。
…にしても、なんのカードか判らんっちゅうんはさすがにキツイものがあるな。
いつかちゃんと考えとかな。